従来スペイン語の呼びかけ語 (vocativo) は、話し手から聞き手へのポライトネスの態度を表すと考えられてきた。しかし返答や質問などの或る場合の機能については詳しい言及がされてこなかった。本研究では、この問題に焦点を当て、映画のシナリオを資料に用いて呼びかけ語の機能を位置ごとに考察する。例文収集による考察の結果、スペイン語の呼びかけ語は、第一に、位置によって異なる機能を果たすと結論付けられる。文頭では聞き手の注意を喚起し、文末では発話に話し手の伝達態度を付加する。また文中では、現れる環境によって文頭および文中両方の機能を果たすと考えられる。第二に、呼びかけ語はポライトネスとしての機能を含めた広い意味での情報の伝達手段として用いられることを主張する。