Arthrobacter globiformis T6イソマルトデキストラナーゼについて,大腸菌による効率的な発現系を構築した.シグナルペプチドを欠失させた発現ベクター(Fig. 1),および25℃という培養温度条件を用い,さらに大腸菌株を検討した結果,当初の段階に比べ発現量は1000倍以上増加し,本酵素の詳細な性質の決定に十分な酵素量を得ることができた(Table 1).一次構造上, A. globiformis T6イソマルトデキストラナーゼは糖質加水分解酵素のファミリー27に属するα-ガラクトシダーゼおよびα- N -ガラクトサミニダーゼとわずかながら相同性を有することが報告されている.そこで,本実験ではα-ガラクトシダーゼの基質であるメリビオースとイソマルトデキストラナーゼとの反応を調べた.イソマルトデキストラナーゼはメリビオースおよび p -ニトロフェニルα- D -ガラクトシドを加水分解しなかった.イソマルトースおよびマルトースに対する本酵素の K i値はそれぞれ2.3および7.8 m M であったが,メリビオースはほとんど本酵素の活性を阻害しなかった(Fig. 2).さらに,メリビオースはデキストランを用いた糖転移反応においても良いアクセプターではなく,イソマルトースをアクセプターとして用いた場合の12分の1しか糖転移反応産物が得られなかった(Fig. 3).本実験の結果,イソマルトデキストラナーゼは加水分解および糖転移において特異的にグルコース残基を認識するものと考えられた.