環状四糖(CTS; cyclo {→6)-α- D -Glc p -(1→3)-α- D -Glc p -(1→6)-α- D -Glc p -(1→3)-α- D -Glc p -(1→})は,四つのグルコース残基がα-1,3とα-1,6で交互に結合した環状オリゴ糖である.CTSの酵素合成は既に報告されており, Leuconostoc mesenteroides NRRL B-1355アルタナンスクラーゼがスクロースから合成する多糖アルタナンに, Bacillus sp. NRRL B-21195アルタナナーゼ(エンド-グルカナーゼ)を作用させることで生成する.我々は独自に土壌由来の細菌をスクリーニングし,非還元性オリゴ糖を生成する微生物を調査した.その結果, Bacillus globisporus と同定されたC11株が澱粉からCTSを生成することを見出した.本株の培養上清から酵素を精製したところ,2種類の糖転移酵素,6-α-グルコシルトランスフェラーゼ(6GT)とα-イソマルトシルトランスフェラーゼ(IMT)を単離することができた.両酵素が協同的に作用し,α-1,4-グルカンからCTSを合成することを明らかにした. B. globisporus C11株からIMT遺伝子( ctsY )と6GT遺伝子( ctsZ )をクローン化した.両酵素遺伝子は染色体上で近接し CtsYZ の順で存在していた.両酵素のアミノ酸配列は糖加水分解酵素ファミリー31に属するα-グルコシダーゼと相同性があり,ファミリー31の触媒残基と提唱されている二つのアスパラギン酸も保存していた. ctsYZ の上流には少なくとも四つの遺伝子( ctsUVWX )が存在し,遺伝子クラスター ctsUVWXYZ を形成していた. B. globisporus C11由来6GTとIMTを用いてCTS生成の反応条件を調べた.Pinedex #100(澱粉部分分解物;加水分解率 1.3%)を用いた場合,CTS生成の最適条件は,基質濃度;3%,pH 6-7,温度;30℃,6GT;1 U/g-DS,IMT;10 U/g-DSであった.48時間反応後のCTS生成率は62%にも達した.さらに,澱粉から高純度CTS結晶粉末の大量製造法を確立し,CTS機能・特性を検討した.