Trichoderma reesei 起源のβ-グルコシダーゼを用いて,β-グルコシダーゼ基質アナログ阻害剤として環状アルキルβ- D -グルコピラノシドの酵素合成法を検討した.環状アルコールであるシクロプロパンメタノール(CPAM),シクロペンタノール(CPE)およびシクロペンタンメタノール(CPEM)を受容体基質に,セロビオースを供与体基質に用いた場合,アノマー選択的にそれぞれの環状アルコールに対応する環状アルキルβ- D -グルコピラノシドの合成が可能であった.吸着樹脂およびゲルろ過により,合成された環状アルキルβ- D -グルコピラノシドを精製後, Trichoderma viride , Aspergillus niger およびsweet almond起源の精製β-グルコシダーゼに対する阻害効果を検討した.合成環状アルキルβ- D -グルコピラノシドの中で,シクロペンチルメチルβ- D -グルコピラノシド(CPEM-β-G)のみがsweet almond起源のβ-グルコシダーゼを拮抗的に阻害し( K i=0.15±0.02 m M ),その他の環状アルキルβ- D -グルコピラノシドは検討したβ-グルコシダーゼに対してはほとんど阻害効果を示さなかった.CPEM自体はsweet almond起源のβ-グルコシダーゼ活性を非拮抗的に阻害した.一方,本環状アルコールにグルコースを導入したCPEM-β-Gの当該酵素に対する K i値は約1/7に減少し,かつ阻害形式は拮抗型を示した.一連の阻害実験から,CPEM-β-Gは菌類起源よりむしろ植物起源のβ-グルコシダーゼ活性を阻害しやすいという知見がみられた.実際,今回合成した配糖体のユリ切り花由来の酵素活性に対する影響を検討したところ,CPEM-β-G(5-10 m M )が最も強く阻害した(54-84%).