澱粉粒結合タンパク質-1を完全に欠損した小麦変異体(SGP-1 null)の澱粉のアミロース含量と分子構造を調べ,普通種と比較した.真のアミロース含量は変異体と普通種でそれぞれ34と26%であった(Table 1).アミロペクチンの数平均重合度(DP n )は変異体で4200,普通種で4700であった(Table 2).いずれのアミロペクチンにも重合度の大きく異なる3種の分子種が蛍光標識/ゲルろ過法で認められた(Fig. 1).数平均鎖長は約21でほぼ同じであったが,単位鎖の鎖長分布は大きく異なっていた.普通種では認められないDP 100以上の長鎖画分が変異体アミロペクチンには重量で9.5%含まれていた.変異体アミロペクチンではA鎖とB1鎖が普通種よりそれぞれわずかに増加,減少しており,単位鎖のモル比(A+B1)/(B2+B3)は変異体で13.8,普通種で13.1であった(Fig. 2, Table 4).アミロースのDP n は変異体で約800,普通種で約1000であった(Table 5).アミロースの重合度分布は小さな分子の割合が変異体でより高かった(Fig. 4).アミロースに占める分岐分子のモル%は変異体で23%,普通種で24%と同一であったが,分岐分子の平均鎖数はそれぞれ13.1と7.5と異なった(Table 5).真のアミロース含量とDP n から澱粉1gあたりのアミロース,アミロペクチンの分子数を求めると,変異によってアミロースの分子数は約1.6倍に増加するのに対しアミロペクチン分子数は変化しないことがわかった(Table 6).