小麦ふすま熱水抽出物中に,糸状菌 Penicillium citrinum の菌体外金属プロテアーゼの産生を誘導する物質を見出し,その化学的性質を明らかにした.誘導物質はイオン交換クロマトグラフィー,ゲルろ過により精製し,1H-NMR解析,α-アミラーゼおよびイソアミラーゼ加水分解物の解析から,α-1,4-1,6-グルコシド結合をもつ,高度に分岐したグリコーゲン型のα-グルカンであることが示された.しかしながら,コントロールとして用いた可溶性デンプン,カキグリコーゲンでは,上記プロテアーゼの誘導はみられなかった.本研究で見出されたグルカンの構造的特徴は分子質量が7 kDa,分岐側鎖の重合度が3-5とグリコーゲンより分岐度が多く,側鎖が短く,しかも分子質量がはるかに小さいという特異なものであった.