主として1998年および1999年に日本の農林水産省(現,(独)農業技術研究機構)の各地農業研究センターで栽培されたアミロース含量の異なる4タイプの米,すなわち糯米,粳米の低アミロース米,中程度のアミロース含量の米,および高アミロース米の胚乳澱粉の構造および物理化学的性質について調べた.測定した項目は,ヨウ素吸収曲線の青価,最大吸収波長,GPC法により得られた澱粉と精製アミロペクチンの側鎖長分布から求めた真と見かけのアミロース含量およびアミロペクチン中の超長鎖含量,HPAEC-PAD法によるアミロペクチンの側鎖長分布,DSCによる糊化温度と糊化熱量,RVAによる粘度特性値,膨潤力と溶解度などである.真のアミロース含量とRVAのピーク粘度との間には高い負の相関関係がみられた.高アミロース米の中にはRVAのピーク粘度およびセットバックが大きく異なる試料が存在していた.粳米澱粉の精製アミロペクチンには超長鎖が存在しており,超長鎖含量とRVAのセットバックとの間には高い正の相関関係が観察されたことより,アミロペクチンに存在する超長鎖が米胚乳澱粉のセットバックに大きく影響することがわかった.アミロペクチンの中で最も短い側鎖画分に相当する6-12量体画分(Fr. A)および超長鎖の割合が高いとDSCによる米胚乳澱粉の糊化ピーク温度が低くなる傾向がみられた.アミロペクチンの超長鎖は熱水中での澱粉粒の膨潤および溶解現象にあまり関与しなかった.近年日本で育成された試料米の胚乳澱粉のアミロペクチンのFr. A含量と超長鎖含量との分布図を作成し,日本で育成された米胚乳澱粉をそれぞれ構造および物性面から系統的に分類する方法を提案した.