本研究では,ガラクトース誘導体を受容体とした転移反応における異常性の原因を明らかにする目的で,いろいろなガラクトシル二糖を合成して,このβ-1,3-ガラクトシダーゼによる加水分解のされやすさを比較した.その結果,β- D -Gal p -(1→3)- D -GlcNAcはβ- D -Gal p -(1→6)- D -GlcNAcよりもずっと速く加水分解されるのに対し,β- D -Gal p -(1→3)-β- D -Gal p -OMeはβ- D -Gal p -(1→6)-β- D -Gal p -OMeよりも遅く加水分解された(Table 1).この結果は転移反応と同じ傾向であり,転移反応でβ-1-6-結合が優勢に得られるのは,加水分解の特異性によるものであり酵素固有の性質として説明できることが明らかになった.次に,他の起源のβ-ガラクトシダーゼでも同様な逆転現象が起こるのか調べた. B. circulans 由来のβ-1,4-ガラクトシダーゼ(Fig. 3),牛精巣由来(β-1,3-結合特異的), E. coli 由来(β-1,6-結合特異的)などでは,ガラクトースを糖受容体とした転移反応を行った場合にも,従来の位置選択性と同様の選択性を示した.したがって, B. circulans 由来のβ-1,3-ガラクトシダーゼでみられた異常な特異性は,この酵素に特有の性質であることが明らかになった.