粳米菓の膨化は, 生地中の水分の気化による体積膨張と生地の物性のバランスによるとされている. 本研究では, 生地の物性に大きく影響を与えていると考えられる生地中の澱粉の状態 (生地性状) に着目した. 生地の性状 (硬化性) を測る手段として分散度を用い, 各工程における産物の生地の分散度を測定し, 粳米菓製造工程中, 特に乾燥工程にて生じている生地性状の変化を検討した. 以下, 得られた事項を示す. 1) 粳米菓製造工程における生地の分散度は, 練り後が最も高く, 第一乾燥で減少した. 第一乾燥以降の工程 (寝かせ, 第二乾燥) では, 殆ど分散度に変化はみられず, 焼成工程でわずかに減少した. 2) 乾燥温度で変化の程度は異なるものの, 生地の分散度は, 乾燥によって生地水分が約25%まで減少し, 水分25%以下では殆ど変化がみられなかった. 3) 生地水分の減少速度 (乾燥速度) が早くなるに伴って, 分散度の減少速度 (硬化速度) は急激に上昇し, 生地の硬化は乾燥速度に依存すると考えられた. 4) 粳米菓製造工程における生地性状の変化は, 乾燥速度の視点で説明でき, 粳米菓の膨化に寄与すると考えられる生地物性 (生地の硬化性) は, 第一乾燥工程にてほぼ決定されると考えられた. 5) 粳米菓製造工程において, 分散度の変化がみられなくなる生地水分に到達するまでの乾燥速度の管理は特に重要で, 当該水分に到達するまでの乾燥速度を上昇させる行為 (例えば, 高温での乾燥) は, 生地の硬化を早め, その結果として, 生地の膨化を阻害すると考えられた.