Aspergillus awamori 由来グルコアミラーゼでは, 触媒残基と水素結合しているセリン411の変異によって, 至適pHが上昇したという報告がある。そのセリン411に相当する残基は, ほとんどのグルコアミラーゼでセリンあるいはグリシンであるのに対し, Thermoactinomyces vulgaris R-47由来グルコアミラーゼ (TGA) ではトリプトファンと異なっていた。そこで, 本酵素のトリプトファン622が至適pHに影響を与える残基であるかどうかを調べるために, 5種類の変異型酵素W622C, W622D, W622G, W622H, W622Sを構築した。これらの変異型酵素の至適pHは6.2-6.8となり, 野生型酵素と同等あるいはわずかに低下したのみであったが, どの変異型酵素も活性の低下が認められた。至適pHにおけるW622Hの活性は野生型酵素の52%と比較的保持していたが, 他の変異型酵素では4.3-17%となり, 大幅に減少した。これらの結果とグルコアミラーゼの立体構造をふまえると, TGAのトリプトファン622は Aspergillus awamori 由来グルコアミラーゼのセリン411とは異なり, 至適pHに影響を及ぼす残基というよりもむしろ基質結合に重要な残基であることが示唆された。