イネの登熟期における種子においてα-アミラーゼアイソフォームであるI-1およびII-4の存在を確認した.それらの登熟期における機能を調べるため,われわれはα-アミラーゼI-1およびII-4のcDNAにカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターをつなげたものを形質転換した組換え体イネ系統を作出した.どちらのアイソフォームも形質転換体植物の幼芽および緑葉組織においてα-アミラーゼのmRNAおよびタンパク質の双方が増加していた.葉におけるデンプン蓄積は,野生系統と比べてそれぞれ42%,82%減少していた.α-アミラーゼI-1とα-アミラーゼII-4の過剰発現であるA3-1とD1-4形質転換体イネ系統をさらにそれぞれ調べたところ,両方の完熟種子において高い酵素活性を示し,D1-4においてはその増加が顕著であった.A3-1とD1-4の完熟種子の乾燥重量にも有意な減少がみられ,それぞれ約4%,11%の減少であった.両系統で乳白米が多くみられ,D1-4においては障害が重度であった.これらの結果からα-アミラーゼ活性の増加は,貯蔵デンプンの蓄積を抑制し,イネの粒質を低下させることを強く示唆している.