マルトオリゴシルトレハロース合成酵素 (EC 5.4.99.15, MTSase) はα-1,4-グルカンの還元末端グルコースをα-1,4-グルコシド結合から α,α-1,1-グルコシド結合へ変換しグリコシルトレハロースを生成する.本酵素はグルカンの還元末端からグルコースを遊離させる弱い加水分解反応をも触媒する.我々は Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909由来MTSase遺伝子に部位特異的変異を導入し,その変異遺伝子を大腸菌にて発現させた.α-アミラーゼファミリーの触媒残基に対応するAsp228,Glu255,Asp443の変異は,酵素活性を消失させた (Table 1).各種MTSaseの間で保存されているLys390またはLys445の変異は,野生型に較べ転移活性を減少させたが,逆に加水分解活性を増加させた (Table 1).さらに,これらリジン残基を巨大な側鎖をもつトリプトファンへ置換することで転移活性はほぼ消失し (Table 2),MTSaseは転移酵素からα-1,4-グルカンの還元末端からグルコースを遊離させる新しい加水分解酵素へと変換された.