1.生育段階の異なる各種澱粉粒の性質について 9種類の作物(サトイモ,ヤマノイモ,クワイ,キウイフルーツ,ジャガイモ,カボチャ,栗,中国大根,ギンナン)について生育中の澱粉の性質を調べ,粒径が生育の初期に大きくなる様子をSEMで確認した.また,アミロース含量は生育の初期に増加する傾向を示した.X線回折図は生育につれて変化するもの(サトイモ・ヤマノイモ・栗・ギンナン),全期間を通じてA図型(クワイ)やB図型(キウイフルーツ・中国大根・ジャガイモ・カボチャ)を示すものに分かれた.サトイモ,ヤマノイモ,クワイ,中国大根ならびに栗の澱粉の糊化開始温度は,生育の初期よりも後期に下がる傾向にあった.キウイフルーツやギンナン,ジャガイモならびにカボチャの澱粉の糊化開始温度は生育による変化はみられなかった. 2.各種澱粉粒の二,三の性質 平均粒径が非常に小さい澱粉粒は,コンニャク(1.2-1.3μm),サトイモ(1.4μm),筍イモ(2μm)およびタケノコ(3.7μm)澱粉で,これらの澱粉粒は豚の膵臓α-アミラーゼによる分解性が高かった.また,酵素クロマトグラフ法によって求めたアミロース含量が少ない澱粉は,筍イモ(10.8%)およびサトイモ(13.5%)澱粉,逆に多い澱粉はサフラン(29.2%),クワイ(29.2%)および小豆(30.4%)澱粉,フォトペーストグラフィーならびに示差走査熱量計で求めた糊化開始温度が一番低かった澱粉はカタクリ澱粉(44,46.8℃),一番高かった澱粉は筍イモ澱粉(73,76℃)であった. 3.各種澱粉粒の走査電子顕微鏡ならびに電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)による観察 コンニャク芋の切片のSEMによる観察の結果,コンニャク澱粉粒は角ばっており,中にはその角ばった小さな粒がたくさん集まってサッカーボールの球のような形を示すものも観察できた.ソテツの幹の澱粉粒の酵素による分解のされ方は,トウモロコシ澱粉粒の分解のされ方と非常によく似ていた.また,FE-SEMによる観察の結果,サトイモ澱粉粒の表面におよそ20nmの幅の紐状のものを観察した. 4.映像でみる澱粉の糊化・膨潤 偏光顕微鏡下で,カタクリ澱粉,ジャガイモ澱粉ならびにミクロトームで切り出した小豆の切片の澱粉が糊化・膨潤していく様子をビデオカメラで撮影し,ビデオに収録したものを9-12倍速に編集し,映像で示した.