Bacillus sp. KSM-K38 株由来のアルカリα-アミラーゼ(AmyK38) はカルシウムを含まない酵素であり,キレート剤のほか酸化剤に対しても安定である. 最近, 本酵素N 末11 アミノ酸残基を Bacillus sp. KSM-1378 株由来のα-アミラーゼ(AmyK) の相当領域と置換することにより, 本酵素の熱安定性が向上することが明らかになった. 本論文ではさらなる熱安定性の向上を目的として本酵素の構造を Bacillus licheniformis 由来の耐熱性α-アミラーゼと比較した. 本酵素のGln167-Gln170 間のループ構造には B. licheniformis 耐熱性α-アミラーゼのGlu167 とLys170 間のような静電相互作用が認められなかったため, 部位特異的変異による新たな静電相互作用の構築を試みた. その結果,AmyK38 のGln167 またはTyr169 をそれぞれGlu またはLys に置換することによって熱安定性の向上が認められた. さらにこれらのアミノ酸置換と前述のN 末11 アミノ酸残基の置換を組み合わせることによって本酵素の熱安定性は大幅に向上した.