パラチノースは抗う蝕性のようなさまざまな機能をもつことが知られている.しかしながら,パラチノースはゆっくりではあるが小腸で加水分解をうけるため,糖尿病のような疾患をもつ患者への使用は薦められない.さらに,この糖のような低分子のオリゴ糖は比較的高浸透圧になりやすいため生体にとってよくない影響を及ぼすことがある.本研究では,二糖であるパラチノースを用い, Thermoanaerobacter brockii kojibiose phosphorylaseのグルコシル転移作用を利用し,グルコース1リン酸とパラチノースから新規オリゴ糖を合成した.反応は糖1および糖2が効率よく生成した48時間で止めた (Fig. 1).また,転移生成物である糖1は反応10時間で最大となった (Fig. 2).活性炭-セライトカラムおよび調製用HPLCを用いて糖1および糖2を単離し,MALDI-TOF-MS分析およびメチル誘導体のガスクロマトグラフィー分析を行い構造の推定を行った (Fig. 3).さらにCOSY,HSQC,HSQC-TOCSYおよびHMBC (Fig. 4) の各手法を用いた2次元NMR解析により糖1を2G-α- D -glucopyranosyl-palatinose; O -α- D -glucopyranosyl-(1→2)- O -α- D -glucopyranosyl- (1→6)- D -fructofuranose,糖2を2G(2-α- D -glucopyranosyl)2-palatinose; O -α- D -glucopyranosyl-(1→2)- O -α- D -glucopyranosyl- (1→2)- O -α- D -glucopyranosyl-(1→6)- D -fructofuranoseと同定した (Table 1).今後,これらの糖の栄養機能について明らかにする必要がある.