サツマイモ澱粉粕から調製したペクチンの食品工業への利用を図る目的で物理化学的性状およびゲル特性について明らかにした.澱粉粕から抽出したペクチン溶液に0.3倍量の95%エタノールを添加すると,抽出液からペクチンを回収することができた (Fig. 1).調製したペクチンは水分3.0%,ガラクツロン酸64.8%,エステル化度1.4%であった.中性糖はアラビノース3.9%,ガラクトース5.1%,ラムノース1.7%,キシロース0.1%,マンノース0.1%およびグルコース0.3%であった.灰分は21.6%であり,ペクチン100g当りナトリウムが6.1g含まれていた.赤外スペクトルは,ポリガラクツロン酸ナトリウムのスペクトルとほぼ同様のものであった (Fig. 2).この結果から,調製したペクチンはカルボキシル基のほとんどがナトリウムに置換されたペクチンであると考えられた.分子量は,7.85× 105と2.42× 105Da付近にピークがある高分子ペクチンであった (Fig. 3).また,ペクチン溶液の粘度は5,20および40°Cいずれにおいてもペクチン濃度が高くなるほど粘度も高くなった (Fig. 4).ペクチンゲルの破断強度に及ぼすpH,ペクチン濃度,カルシウム濃度およびスクロース濃度の影響について検討した.その結果,pHの影響は,pH 3.0以上でゲルが形成され,破断強度はpH 4.0以上でほぼ一定の値であった.ペクチン濃度は,0.5から1.5%に増加すると,ゲル強度はほぼ直線的に増加した.カルシウム濃度とゲル強度には正の相関が認められたが,1 gペクチン当たり25 mg以上のカルシウムが存在すると,ゲル破断強度は急激に低下した.糖濃度の影響は,ゲル破断強度に大きな影響は与えなかった (Fig. 5).