アルギン酸リアーゼを産生する海洋性細菌の同定を行うとともに菌体外酵素についてDEAE陰イオン交換カラムを用いたHPLCによる部分精製を試み,諸性質について検討を行った.その結果,節足動物の腸内容物より得られた細菌は Pseudoalteromonas 属に属していた.酵素は分子質量が32.0 kDa,また酵素反応時の最適温度,pHはそれぞれ50°Cおよび7.1-7.7(リン酸バッファー)であり,温度,pHに対する安定性はそれぞれ40°Cおよび6.3-8.9であった.また,Mg2+,Ca2+いずれの添加においても酵素活性が無添加群と比較し300%以上の増大を確認した.アルギン酸よりマンニュロン酸およびグルロン酸画分を調製し酵素反応を行ったところ,それぞれに由来するオリゴ糖が観察され,両基質に作用していることが示唆されたものの,いずれのグリコシド結合を切断しているかまでの特定には至らなかった.以上の結果から,今回精製した菌体外酵素は,これまで Pseudoalteromonas 属では報告のない至適温度が高く,かつMg2+,Ca2+いずれのイオン添加において著しく酵素活性が増大する新規な酵素であることが示唆された.