アラビノガラクタン-プロテイン(AGPs)は高等植物のプロテオグリカンの一種であり,その生長や発生への関与が示唆されている.また,食品素材・食品添加物として用いられているガムアラビックやカラマツアラビノガラクタンはAGPsの一種である.AGPsの糖鎖は,その分子の大部分を占め,β-1,3-ガラクタン主鎖にβ-1,6-ガラクタン側鎖が結合している.これらのガラクタン鎖を加水分解できる酵素はAGPs分解に重要であるが,その研究はきわめて少ない.われわれは Phanerochaete chrysosporium 由来エキソ-β-1,3-ガラクタナーゼ(Pc1,3Gal43A)と Trichoderma viride 由来エンド-β-1,6-ガラクタナーゼ(Tv6GAL)を初めてクローニングすることに成功した.Pc1,3Gal43Aは糖質加水分解酵素(GH)ファミリー43と糖結合モジュール(CBM)ファミリー35の二つのモジュールで構成されていた.本酵素は二つのガラクトース残基間のβ-1,3結合のみを加水分解するエキソ型酵素であるが,AGPsに作用した場合にはβ-1,6結合のガラクタン側鎖をバイパスしてガラクトースとβ-1,6-ガラクトオリゴ糖を生産した.また,C末端側のCBM35はβ-1,3-ガラクタンに特異的に結合した.Pc1,3Gal43Aの配列を用いたBLAST検索により見出された Clostridium thermocellum, Streptomyces avermitilis 等の細菌や植物( Arabidopsis thaliana )の類似配列を発現させ,エキソ-β-1,3-ガラクタナーゼが生物界に広く存在することを明らかにした.一方,Tv6GALの配列を用いたBLAST検索より見出された S. avermitilis 由来の配列が,β-1,6-結合のガラクトースからなる基質のみを加水分解するエンド型酵素であることを明らかにした.