登熟胚乳の可溶性画分のSS活性の6割を占めるイネスターチシンターゼSSIは,植物において,その遺伝子の構造から,独特の機能をもつと考えられる.われわれは貯蔵デンプンを蓄積する植物として初めて,逆遺伝学的方法を用いてイネの SSI 変異体を単離し,それらの詳細な鎖長分布解析等から,SSIがアミロペクチンのA鎖およびB1鎖の非還元末端がDP6-7の鎖をDP8-12に伸長する機能をもつことを解明した1).本研究では,大腸菌で発現させたイネSSI(rSSI)を用いて,Native-PAGE/SS活性染色法でα-グルカンと in vitro で反応させることで,その機能解析を行った.DP6の鎖が特異的に多いカキグリコーゲンおよびDP7をピークとした短鎖を豊富に含むウサギグリコーゲンを基質に用いたところ,rSSIによって伸長されたα-グルカンは,元のものに比べていずれもDP6の鎖が減少し,DP8をピークとしたDP8-12の鎖が特異的に増加した.また,イネアミロペクチンを基質に用いた場合,rSSIにより伸長されたDP20以下の鎖は小刻みな増減(DP6,7,10,13,17が減少,DP8,12,14で減少率が低下)を示し,DP20以上の鎖は増加していた.以上のことから,rSSIは,DP6か7のA鎖にグルコース1-2個付加する反応が特異的に強く,これに加えて短いB1鎖および長いB1鎖,さらにはB2鎖の非還元末端から分岐点までがDP6か7の鎖をグルコース1,2個程度伸長することがわかり,変異体によって明らかになった機能を裏付ける結果となった.