コンゴーレッド(CR) 0.02 m M 濃度-0.2 M 酢酸緩衝液溶液(pH 5.0)にサイクロデキストリン(CD)のα-CD系(α-CD,グルコシル(G1)-α-CD,マルトシル(G2)-α-CD),β-CD系およびγ-CD系を各種濃度で添加して500 nmでの吸光度を比較した結果,G1-α-CDを含むCRの吸光度はα-CDを含むCRのそれよりわずかに高く,G2-α-CDを含むCRの吸光度はかなり高く,CD添加40 m M でも吸光度は上昇し続けた.β-CDの濃度に対するCRの吸光度の変化を示した曲線から,プラトーに達する濃度はpH 5.0では5 m M で,β-CDとG2-β-CDではほぼ同等の曲線であるが,β-CDでわずかに高かった.γ-CDでは,pH 5.0では0.04 m M であり,吸光度がプラトーに達した濃度で複合体形成が完成するものと仮定すれば,pH 5.0で1:2のCR: γ-CD複合体が形成されたことになる.これらの結果から,われわれはCD空洞のサイズとその性質がCR分子とCD分子の相互作用に影響すると推論した.α-CDでは,空洞のサイズが小さすぎてCR分子は入れず,CR分子へのCD分子の影響は小さく,β-CDでは,CR分子に,ある程度影響するが,CR分子は空洞には入れない.γ-CDでは,空洞にCR分子を取り入れることができ包接体を形成するが,枝は包接体形成に影響しない.α-,β-CD系はCD包接体以外の何等かの相互作用をし,特にβ-CDでは,包接体形成以外の相互作用が強く,その相互作用はCR/β-CD濃度比1:250以下で完成する,と推察した.プロトンNMRでは,CRのケミカルシフトがγ-CD系の添加で大きく変化するが,β-CD系ではわずかに変化,α-CD系では変化しなかった.γ-CDを同モル以上CR溶液に添加した場合,CRのプロファイルは完全に変化し,複合体形成比は1:1であった.NMRで求めたCR: γ-CD複合体形成比とスペクトル分析により求めた複合体形成比の違いは,pHにより複合体形成が変化することによるものと推論した.