アミロペクチン単位鎖長分布と超長鎖(LC)含量に及ぼす登熟温度の影響をHanashiroらの蛍光標識ゲル濾過HPLC法で調べた.北海道米の主要品種である「きらら397」のアミロペクチンLC含量は,低温(21/17°C)2.58%,中温(25/21°C)1.30%,高温(29/25°C)0.48%で登熟温度が低いほど多かった(Table 1).アミロペクチン単位鎖の短鎖(A+B1)と長鎖(B2+B3)の重量比およびモル比(A+B1)/(B2+B3)は登熟温度が低いほど大きかった(Table 2).これらの結果は,近年育成された北海道米5品種と4系統およびミルキークイーンを供試して確証された.登熟温度は22/16,26/20,30/24,34/28°C(昼/夜)で行った.アミロペクチンLC含量の平均登熟温度1°C当たりの変動量は,19-23°Cの範囲では0.542%,23-27°Cでは0.152%,27-31°Cでは0.037%で,低温ほど大きかった(Fig. 4).見かけのアミロース含有率は登熟温度と負の相関があることが知られているが,アミロペクチンLC含量も同様に低温で増加することが明らかとなった.低アミロース品種はうるち品種に比べて見かけのアミロース含量に占めるアミロペクチンLC含量の割合が高かった(Fig. 6).見かけのアミロース含量とアミロペクチンLC含量は品種よりも登熟温度の影響が大きかった(Table 4).以上のことから,今後の良食味米の選抜において,アミロペクチンLC含量が低く,異なる登熟温度条件でも澱粉の構造が安定している品種の育成が目標である.これはアミロペクチンLCの生合成に関与する酵素の遺伝子分析によって達成できるかもしれない.