植物細胞壁多糖であるアラビナンは,高等植物においては細胞接着や稔性に関与し,植物の伸長成長にも関わる多糖として,多くの研究者の注目を集めている.アラビナンはアラビノフラノース残基がα-1,5結合した多糖で,植物細胞壁中ではペクチン様多糖のラムノガラクツロナンIの側鎖として存在し,UDP-アラビノフラノースを基質として合成される.このUDP-アラビノフラノースはアラビナン以外にも,アラビノキシランやアラビノガラクタンプロテインなどアラビノフラノース残基を含む多糖の合成にも利用されていると考えられている.しかし,アラビナンおよびUDP-アラビノフラノースの生合成機構については未だ不明な点が多い.近年,我々はUDP-アラビノフラノース合成に関わる酵素,UDP-アラビノピラノースムターゼ(UAM)を発見した.UAMはUDP-アラビノピラノースからUDP-アラビノフラノースの生成を触媒する酵素である.我々はイネ芽生えよりUAMを精製し,遺伝子の単離・同定に成功した.遺伝子単離の結果,UAMはreversibly glycosylated polypeptides (RGP)と一致することがわかった.また,微生物ではUDP-ガラクトフラノースの生成に関与する酵素,UDP-ガラクトースムターゼが既に単離され,UDP-アラビノースも基質として認識し,UDP-アラビノフラノースの生成も行うことが報告されていたが,単離したUAMは微生物のUDP-ガラクトースムターゼとは異なる特徴を示した.それゆえ,植物由来UAMは微生物のUDP-ガラクトースムターゼの触媒反応とは異なる機構を有することが示された.