放線菌 Streptomyces olivaceoviridis E-86由来ファミリー10キシラナーゼ(SoXyn10A)は触媒モジュール,糖結合モジュールおよび両モジュールを繋ぐリンカーからなる.われわれは,これらすべてを含む結晶構造解析に成功した.その結果,触媒ドメインは九つのαヘリックス(α0-8)と八つのβシート(β1-8)からなり,触媒ドメイン中のN末端αヘリックス(α0)とC末端αヘリックス(α8)とが相互作用していることが明らかになった.結晶構造から,両αヘリックス間にはSoXyn10Aの安定化に重要な結合があると予想された.そこで,SoXyn10Aの安定化に寄与しているα0-α8間の結合を明らかにするために,SoXyn10AのC末端欠損変異体を作成し,欠損が酵素の安定化に及ぼす影響について調べた.触媒ドメインのC末端のアミノ酸を一つずつ削り込んだ変異体では,欠損の程度に準じてSoXyn10Aの熱安定性が段階的に減少したが,酵素活性には変化がみられなかった.塩酸グアニジンを用いて各変異体の安定性を比較した結果,結晶構造から予測したとおり,α8中のLeu-300がα0と相互作用し疎水性コアを形成していることを明らかにした.さらに,リンカー中のAsn-252をAlaに置換すると熱安定性がやや減少し,α8中のGly-303とAsn-252間の水素結合もまた,SoXyn10Aの安定性に重要であることを明らかにした.次に,同じファミリー10キシラナーゼである Cellulomonas fimi のCfXyn10AとSoXyn10Aとのキメラ酵素を作成し,これらの相互作用について検証した結果,C末端の四つのアミノ残基の付加により,熱安定性が上昇した.しかしながら,CfXyn10AにSoXyn10AのN末端,C末端を導入した場合には,SoXyn10Aと同程度の熱安定性の減少が確認できた.N末端とC末端の相互作用の温度限界はSoXyn10Aと一致しており,両末端のゆがみによりタンパク変性しやすくなることを明らかにした.