放線菌 Streptomyces olivaceoviridis E-86由来ファミリー10キシラナーゼ(SoXyn10A)はN末端側の触媒モジュール,C末端側の糖結合モジュール(XBM)および両モジュールを繋ぐリンカーからなるモジュラー酵素である.全長を含む結晶構造において,XBMは触媒ドメインの基質結合クレフトの(-)サブサイト側に存在することが明らかとなった.SoXyn10Aが両ドメインを使ってどのように基質を認識しているかを調べるために,サブサイトの入り口に障害物をもつような,いくつかのクレフト変異体を構築した.変異体酵素の構造に揺らぎがないことを円偏光二色性により確認した. p -ニトロフェニル-β- D -キシロビオシドを基質とした解析では(-)サブサイト側に障害物を構築した変異体についてのみ活性の低下が認められたことから,基質であるキシランは(-)サブサイト側から基質結合クレフトに入り込むことが示唆された.クレフト変異体酵素の不溶性キシランに対する活性をXBMの有無で比較したところ,すべてのクレフト変異体においてXBMを含む構築の方が顕著に活性が高いという結果が得られた.このことは両モジュールを繋ぐリンカー配列がフレキシブルに動くことにより触媒モジュールが移動し,基質を分解するというメカニズムであることを示唆する.