清酒醸造条件下で蒸米中のデンプンの老化を調べた.アミロペクチンの老化に由来するエンタルピー変化量は,製麹およびもろみ工程中で増加した.清酒もろみ中のエタノールは,アミロペクチンの老化を促進した.清酒醸造に使用される日本産米136試料について酵素消化性とデンプン特性を調べた.清酒醸造条件での消化性をより正確に推定するために,15°Cで1日放置した蒸米の酵素消化性試験を実施した.アミロペクチンの短鎖/長鎖比は酵素消化性と高い相関性を示し,このことからアミロペクチンの構造によって酵素消化性が予測できることが示された.玄米/精白米および精製デンプンのDSC(示差走査熱量計)による糊化温度はアミロペクチンの短鎖/長鎖比および酵素消化性と高い相関性を示した.さらに精白米のRVA(ラピッドビスコアナライザー)による糊化開始温度は,アミロペクチンの短鎖/長鎖比および酵素消化性と高い相関性を示した.以上の結果,DSCとRVAは,迅速にかつ少量の玄米あるいは精白米試料を用いて測定できるので,清酒醸造における蒸米の酵素消化性を推定するのに有用な装置であることが明らかとなった.