粳性あるいは糯性のトウモロコシ澱粉と水との混合物を600 MPaの高圧力で,40°C,1時間処理し,澱粉含量(10-70%(w/w))が高圧処理澱粉の各種物性に及ぼす影響を調べた.熱走査型熱量計(DSC)により求めた糊化エンタルピー変化から糊化度を,広角X線回折法により結晶性を,光学顕微鏡による観察により試料形態をそれぞれ評価した.また,高圧処理澱粉および熱糊化澱粉の凍結乾燥試料を用いて,水中での含水沈殿量から保水力を,遠心分離した上清中の固形分含量から冷水可溶性を評価した.その結果,いずれの澱粉においても,澱粉含量が低いほど,高圧処理澱粉の糊化エンタルピー変化は減少し,X線回折図形の散乱ピーク強度は小さくなった.また,高圧処理により完全糊化した試料の保水力を比較すると,粳性試料では熱糊化試料よりも大幅に保水力が低下したが,糯性試料では低澱粉含量領域で同等であった.冷水可溶性は,糊化度が低い試料ほど低下し,粳性試料の方が糯性試料よりも低かった.高圧処理した粳性および糯性のトウモロコシ澱粉では形態が異なり,完全に糊化させた場合,高圧処理粳性試料は,粒状構造を保ち,粒状構造が崩壊した高圧処理糯性試料よりも保水性および冷水可溶性が低下した.