好アルカリ性 Bacillus sp. 41M-1株が分泌するキシラナーゼ J(XynJ)は,反応の最適をアルカリ性域に有する新規な好アルカリ性のキシラナーゼである.本酵素はマルチドメイン酵素であり,糖質加水分解酵素(GH)ファミリー11に属する触媒ドメインおよび糖質結合モジュール(CBM)ファミリー36に属するキシラン結合ドメイン(XBD)からなる.GHファミリー11中性キシラナーゼとの立体構造比較の結果,XynJの触媒クレフト内部にはいくつかの特徴的塩橋が存在することがわかった.特徴的塩橋を構成する残基にアミノ酸置換を導入した変異型酵素を調製し,性質検討を行った.塩橋を破壊した変異型酵素においては反応最適pHの酸性側へのシフトが観察され,特徴的塩橋はXynJの好アルカリ性に重要であることが明らかとなった.一方,触媒クレフトに存在する特徴的塩橋の強化により,野生型酵素ではpH 8.5にあった反応の最適がpH 9.0にまでシフトした.さらに,タンパク質分子表面への過剰のArgの導入もXynJの好アルカリ性向上に効果的であった.グルタチオン-S-トランスフェラーゼとXBDとの融合タンパク質を用い,アミノ酸置換を導入した変異型XBDのキシラン結合能を調べた.さらに,XynJのXBD領域に同様なアミノ酸置換を導入し,それらの不溶性キシラン加水分解活性を調べた.その結果,いくつかのAsp,TrpおよびTyr残基がXBDのキシラン結合活性に重要であることがわかり,不溶性キシラン加水分解活性はキシラン結合活性とよく相関していた.