リンゴ銀葉病菌( Stereum purpureum ASP-4B)由来エンドポリガラクツロナーゼI(EndoPG I)のプロ体は他起源のPGにはみられないユニークなC末端領域(プロ配列)を有している.この配列は本菌の培養濾液から精製された成熟型EndoPG Iにはみられない.本研究ではこのプロ体を大腸菌に発現させ,それらの性状を解析した.その結果プロ体には活性がみられなかったが,V8プロテーゼを用いプロ配列の一部を消化したものには活性が現れた.これらの結果はプロ配列が自己の不活性化に関与していることを示唆している.これまで報告された糖質加水分解酵素で,このような性質を有するものはない.この不活性化にプロ配列44残基のうち必要とするアミノ酸残基数,また重要なアミノ酸を明らかにするためC末領域の欠失変異体を作成し,その比活性を測定した.その結果プロ配列の31から32残基が必要であり,364番目と366番目のグルタミン酸が特に重要であることがあきらかになった.プロ体をリンゴの苗木に注入した結果,成熟型と同様銀葉症状を呈した.プロ体は,植物由来のプロテアーゼにより植物中で活性化しているものと考えられる.