カカオ( Theobroma cacao )は,多くの熱帯地域の国の重要な作物であり,チョコレートの原材料として栽培されている.カカオにおいても害虫耐性の付与など品種改良が望まれているが,その基礎となるカカオの生理・生化学,分子遺伝学についてはほとんどわかっていない.また,現時点ではカカオのゲノム情報も明らかにされていない.われわれは,カカオポッド果殻のプロテオームを明らかにするため2次元電気泳動(2-DE)/質量分析を行った.カカオポッドには大量のガムが含まれているため,ポッド果殻タンパク質をフェノール抽出/メタノール-酢酸アンモニア沈澱法により調製した.タンパク質試料を2-DEで分離し,コロイドCBBで染色したところ,2-DEゲル中において約700のタンパクスポットを検出することができた.244個のタンパクスポットについてトリプシン消化物のSPITC-誘導体を調製し,MALDI-TOF/TOF MSを用いた de novo シークエンシングを行った.この方法により144個のカカオポッド果殻タンパク質を同定することができた.同定されたタンパク質の大部分は代謝やエネルギー生産に関与するものであった.また,ポッドの成長・分化に関わるタンパク質も検出された.