液体培地中に添加する金属イオンの種類と濃度を制御することにより,特定の代謝産物を大量に生産させる金属イオン制御培養法の確立を目的として,金属イオンストレス下での微生物の生理的変化を調べた.微生物としてRhizopus sp. MKU 40を用い,菌の生育とグルコアミラーゼ生産を微生物生理の指標とした.その結果,亜鉛,マグネシウム,鉄イオンは本菌の生育およびグルコアミラーゼ生産に必須であった.また,カルシウムイオンの添加により,グルコアミラーゼの生産性はさらに増強した.これらの金属を至適濃度添加させることにより,グルコアミラーゼ活性を3.94U/mLにまで増強させることができた.さらに本酵素の精製は容易で,硫安沈澱,CM-Sephadex C-50イオン交換クロマトグラフィーの2段階で完了した.精製後の比活性値は培養液の4.8倍に達し,活性回収率も86.0%と高かった.またSDS-PAGEにより本酵素の分子量は約80.4kDaと推定された.本菌が生産するグルコアミラーゼの生澱粉分解能について調べたところ,粗酵素では可溶性澱粉分解活性基準で26%,精製酵素では16%程度の高い生澱粉分解活性が得られた.さらに培養液中の蛋白質量あたりの比活性値も21.9U/mg proteinと高かったことから,本培養法は生澱粉分解性グルコアミラーゼの生産に有望であった.