9-14.5年と生育段階の異なる7種のサゴヤシから調製した澱粉および,各生育段階での幹高の異なった部位から得られた澱粉の理化学的性質を,粒度分布,顕微鏡観察,X線回折,粘度特性およびゲルのテクスチャーについて調べ,次のような結果を得た. 1)粒度分布の測定から生育年数の長い14.5年木の澱粉はいずれの部位においても小粒子が多く,また樹幹上部の澱粉はいずれの生育年数においても小粒子が多かった. 2)X線回折から樹幹上部の澱粉は生育年数によりX線回折強度に差が認められ,14.5年木の澱粉は部位によりX線回折強度に差が認められた.また,樹幹上部の澱粉は根元部に比べ結晶性が高く,さらにこの上部の澱粉は9年木より14 .5年木のほうが結晶性の高いことが示された. 3)ラピットビスコアナライザーによる粘度測定から,9年木の澱粉は徐々に粘度が上昇するのに対して,14.5年木の澱粉は,低い温度で最高粘度に達し,高粘度でブレークダウンが大きかった. 4)14.5年木の澱粉ゲルは試料中最も硬い値を示し,部位によるゲルの硬さの差はほとんどなかった.11.5-13年木の澱粉ゲルは樹幹上部の澱粉ゲルが硬く,根元部は軟らかいゲルであった. 5)以上,サゴ澱粉の性質は生育年数別においてとくに最大生育年数の14.5年木の澱粉が他とは大きく異なる性質を示し,わずかに残ったサゴ澱粉の性質と果実形成との関連が示唆された.澱粉収量の多い11.5-12.5年木の澱粉は,粒径,X線回折分析およびゲルの硬さの項目で近似の性質を示し,これは市販のサゴ澱粉にほぼ近い性質であった.また部位別においては,すべての項目で差が認められた.