イネのα-アミラーゼアイソフォームの組織別発現と培養細胞を用いた糖による合成抑制現象について解析した.各種のイネの組織を用いたザイモグラム解析によって,主に6種類のα-アミラーゼアイソフォーム,すなわちアイソフォームY,A,G,H,IとJが確認され,その内,Aは発芽種子で, Yは幼植物で, A-Jは培養細胞での主要なアイソフォームであった.精製後のアミノ酸配列の決定の結果から,アイソフォームAはRAmy1A,アイソフォームHはRAmy3D遺伝子の翻訳産物であることが明らかとなっている(Plant Physiol.,110,1395-1404(1996)).イネのα-アミラーゼ遺伝子が糖によって転写抑制を受けることがよく知られていることから,これらのアイソフォームの糖応答性について解析を加えた.RA my3D翻訳産物(アイソフォームH)は代謝される糖によって完全に合成が阻害されるのに対して,RAmy1A訳産物(アイソフォームA)は,その合成が糖による阻害を受けるものの,RAmy3D翻訳産物に比べるとその阻害程度が緩やかであった.両タンパク質の発芽時における生理的意義について考察した.