分級精粒法により調製した分級小麦粉の特性と分級粉の代替によるドウ物性と製パン性について検討した.小麦穀粒が通常の方法で製粉されると,ほとんどの食物繊維やミネラルが除去される.そこで,穀粒すべてを保持できる分級精粒法を使用した.軟質小麦品種,農林61号の穀粒を,穀粒総重量の10%の割合で外層から中心部まで段階的に搗精した.いずれの分級粉もパンのボリュームは小さく,硬くなった.さらにドウの粘弾性(圧縮応力,弾性率,粘性係数)は増加した.ドウ中のSH基含量は市販の強力粉よりも多く含まれていたが,SS結合の量は少なかった.いずれの分級粉も単独では,良好な製パン性を示さなかった.通常に製粉された農林61号(N61)への10%の分級粉A-4(70-60%),A-7(40-30%)の代替により,比容積はN61単独の場合よりも若干増大した.更にヘミセルラーゼ(Hem)を添加すると,パンの体積は明らかに大きくなり,軟らかくなった.ドウの顕微鏡観察ではN61単独の場合よりもグルテンマトリックスが太ぐなり,ほとんどの澱粉粒子が包まれていた.N61への10%の分級粉A-4(70-60%),A-7(40-30%)の代替により,Hemの添加の有無にかかわらずドウの物性と製パン性を明らかに改善することがわかった.