グリコールキチンを用いてエリシター処理した甲州ブドウ果実から誘導性キチナーゼを精製した.ブドウ抽出液の硫安塩析(80%飽和)画分を,キトパールBL-3およびQ-SepharoseHP(HiTrapQ)を用いたカラムクロマトグラフィーに掛け,キチナーゼを分離した.エリシター処理をしたブドウ果実から精製した誘導キチナーゼはポリアクリルアミドゲル電気泳動において単一であった.誘導キチナーゼの反応最適pHは4.0,またpH5.0-6.5の範囲で酵素は安定であった.反応最適温度は40℃,また40℃以下の温度で酵素は安定であった.誘導キチナーゼのN末端アミノ酸配列は,NH2-GTITvYxGQNGQであった.この配列は,VitisviniferaクラスIIIキチナーゼと高いホモロジーを示した.誘導キチナーゼは灰色カビ病の原因菌であるBotrytiscinereaの増殖を阻害した.この事実は,本誘導キチナーゼが成熟ブドウの病原菌に対する防御機構において,重要な役割を果たしていることを強く示唆している.