Thiobacillus thiooxidansを使った亜硫酸の高感度自動測定装置が,著者の研究グループによって開発され,澱粉産業を含む食品工業界において食品およびその素材に残留する亜硫酸の定量に供用され,多くの実績を上げている.しかしながら,本センサの酵素学的な解析はこれまでまったくなされてこなかった.そこで,菌体としての酵素反応基盤を確立しようとした.まず,菌体を酵素試料とするassay法を確立し,次に,反応初速度がT.thiooxidansの濃度に比例すること,およびフェリシアン化カリウムの分光光度法による解析等から,菌体を用いた触媒反応は亜硫酸脱水素酵素に依拠すると考えて,実験を行った.菌体酵素触媒反応の至適pHは7.5であった.したがって,本センサー装置はpH7.5で操作するのが適切と考えられる.また,基質亜硫酸に対する速度論量として,Michaelis定数K出は1.0±0.1mM,また最大速度Vは0.065±0.032mM/min/mgであつた.以上の結果から,本センサ装置は亜硫酸脱水素酵素(sulfite dehydrogenase)触媒の反応基盤を満たしており,亜硫酸分析装置として妥当なものと判断された.