トゲキリンサイから`ιカラギーナンを分離・同定した.トゲキリンサイは沖縄県宮古島の内海で採取し,水洗いと塩抜きの後,通風乾燥(40℃,24時間)させ,乾燥藻体を得た.乾燥藻体を蒸留水に分散させ,煮沸によって多糖を抽出し,常法により精製すると,4.6%(対湿潤藻体)の収率で多糖を得た.本多糖の全糖量,灰分,硫酸はそれぞれ,71.4%,21.2%および23.8%であった.本多糖を加水分解およびメタノリシスの後,ペーパークロマトグラフィー,液体クロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィーにより,D-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-D-ガラクトースを同定した.また,システイン-硫酸法とレゾルシン法により,それぞれの糖の含量は39 .1%および30.5%であった.本多糖の分子量はおよそ28万と推定された.また,本多糖の赤外吸収スペクトルおよび旋光度の結果は標品のι-カラギーナンのそれらと良く一致した.さらに,13C-および1H-NMRスペクトルの結果から,D-ガラクトース-4-硫酸と3 ,6-アンヒドロ-D-ガラクトース-2-硫酸を同定した.以上の結果から,本多糖はι-カラギーナンであると同定した.