白色腐朽菌であるIrpex lacteusは,電子受容体に対して異なる特異性を示す二つのセロビオース脱水素酵素(CDHI,CDHII)を生産する.その中でも主要成分と考えられるCDHII を単一に精製し性質を調べた.CDHIIはヘムフラボタンパク質であり,SDSPAGEで97kDaの分子量であった.また,本酵素はグルコースとして7.2%の糖含量を持つ糖タンパク質であることがわかった.本酵素の基質特異性,最適温度および温度安定性,Phanerochaete chrysosporium由来のCDHに類似していたが,pH安定性は3から5までの間であり,とくにアルカリ性側での安定性は他菌のCDHに比べて低かった.また,最適基質および電子受容体であるセロビオースとチトクロムcに対するkcat/Km値は,おのおの429.4mM-1s-1と4405mM-1s-1であった.セルロースに対する等温吸着に関する研究から,本酵素の吸着はone-binding siteメカニズムに従っていることが予想された.また,本酵素の基質への吸着における親和性は,アモルファスセルロースより結晶性セルロースに対して高く,逆に吸着量は,アモルファスセルロースに対して高い結果が得られた.