硬質小麦1CWより分級精粒法により分級粉を調製し,ドウの物性と製パン性に及ぼす分級粉の特性を検討した.分級粉はいずれも通常に製粉された硬質小麦粉(CW)に比べて灰分と食物繊維を多く含んでいた.これらの分級粉はK,Ca, Feなどのミネラルを多く含み,最外層部を除き,水溶性ペントサンもCWより多く含んでいた.さらに酵素活性は,すべての分級粉でcwよりも高いβ-アミラーゼやジアスターゼ活性を示し,損傷澱粉も多く含んでいた.一方,パンの比容積はCWよりも顕著に小さかった.また,いずれの分級粉も単独ではパンの硬さに良好な効果を示さなかった.ドウの粘弾性は,CWよりもすべて高い値を示した.分級粉単独のドウの顕微鏡観察からは,共存する外皮が良好な品質のパンを焼成できるグルテンマトリックスを形成できないことが示唆された.以上の結果,分級粉単独ではその高いジアスターゼ活性と多量の損傷澱粉ならびに外皮の食物繊維の存在により,十分なドウの物性および製パン性を示さないことが推察された.