キシラナーゼはそのアミノ酸配列から予想される立体構造に基づき,2種のファミリーに分類されているが,糖転移反応においては個々の成分に特有のアグリコン特異性を持っており,受容体の化学構造から糖転移反応の可能性を予測することは困難である.本論文ではHypsizigus marmoreusの生産するキシラナーゼの受容体特異性を検討した.本実験で用いた芳香族化合物中では,フェノールを除いて100mmの濃度まで酵素は安定であった.バニリルアルコール存在下では,むしろキシラナーゼ活性は促進され,非存在下の場合に比較して多くの生成物を生産した.アルコール性の水酸基を有する芳香族化合物中では,二重結合を持つシンナミルアルコールが最も良い受容体であり,全生産物に対する転移率は30.8%であった.本酵素はジフェノール化合物や,アルコール性およびフェノール性の両水酸基を持つ化合物にも転移するが,アルコール性水酸基への転移確率が高かった.