Streptomyces sp.から精製したβ-D-グルコシダーゼF1(分子量,50,000;最適pH,5.5)の基質特異性と活性部位について反応速度論的な検討を行った.本酵素は,β-グルコシド結合からなる各種の合成基質や二糖に対し広い基質特異性を示したが,二糖よりも合成基質に対し高い特異性を示した.合成基質ではP-ニトロフエニルβ-グルコシド(Km,0.72mM;k0,63s-1)よりもP-ニトロフエニルβ-フコシド(Km,0.19mM;k0,44s-1)が,二糖ではセロビオースよりもラミナリビオース(Km,1.6mM;k0,70s-1)が加水分解の反応効率からみてより優れた基質と考えられた.P-ニトロフェニルβ-グルコシド(PNPG),β-フコシド(PNPF)およびβ-ガラクトシド(PNPGal)が共通の活性部位で加水分解されるか否かについて,混合基質を用いた反応系において速度論的解析を行った.PNPGとPNPF(またはPNPGal)の混合基質の加水分解におけるいくつかの速度論的特徴,特にLineweaver-Burkプロットの直線性,あるいはPNPGの他基質に対するモル分率げ(f),f=[PNPG]/([PNPG]+[PNPFまたはPNPGal])の最大速度とミカエリス定数への依存性の実験値は単一触媒部位機構において理論的に予測される値によく一致した.これらの実験結果は,本酵素がこれら三種の合成基質を共通の活性部位で分解していることを支持している.