品種の異なるサツマイモから調製したサツマイモ澱粉の老化特性を比較した.また,澱粉の老化特性と澱粉の特性,アミロースとアミロペクチンの糊化度の変化,および,アミロペクチンの分子構造との関連性を検討した. 1)品種の異なるサツマイモ澱粉のゲルを調製し,5℃ で保存したときの老化を比較した結果,九州123号,サツマスターチ,ジョイホワイトは澱粉の老化が遅く,老化の速い九州126号,シロユタカなどの品種よりも菓子素材用として適する品種と判断された. 2)RVAで測定した粘度特性では,澱粉の老化の遅い品種は,粘度上昇温度が低く,セットバックが小さい特徴を示した.また,老化の遅い品種は,アミロース含量が低く,リン含量が少ない特徴を示した. 3)ヨウ素親和力から求められる澱粉ゲルの糊化度の変化に,品種による違いは認められず,酵素法で求められる澱粉ゲルの糊化度の変化には,品種で違いがみられ,澱粉ゲルの老化速度と傾向が一致した.このことにより,品種の異なるサッマイモ澱粉の老化速度の違いは,主としてアミロペクチンの老化に起因すると判断された. 4)枝切りしたアミロペクチンの鎖長分布の分析から,老化が遅い品種の澱粉は,アミロペクチンに長鎖が少なく,短鎖が多いことが示された.また,短鎖には,重合度6-10が多く,重合度11-17が少ないことが示され,分岐が多い分子構造であることが推察された.アミロペクチンの分岐が多い特徴は,澱粉の親水性や保水性が増加し,糊化時の粘度上昇温度が低く糊化しやすく,老化しにくい性質であることに関与していることが示唆された. 5)アミロペクチンのリン酸化単位鎖のゲル濾過の結果から,アミロペクチンのリンは大部分が長鎖に結合していることがわかった. 6)老化の遅い品種の粘度上昇温度が低く,リン含量が少ない特徴は,アミロペクチンの長鎖が少なく,短鎖が多い分子構造に由来するもので,サツマイモ澱粉の老化特性とアミロペクチンの分子構造との強い関連性が示唆された.