Rhizopus niveus由来のグルコアミラーゼ(GA)を用い,遷移状態アナログであるグルコノラクトン(GLN)および基質マルトース(G2)の取り込み反応に及ぼす尿素の影響について,速度論的および平衡論的に解析を行った.Trp残基に基づく蛍光強度変化を指標として,ストップトフロー法を用いた遷移相速度論解析の結果,GLNとG2はともに速い2分子過程でサブサイト2に取り込まれ,続く遅い1分子過程でサブサイト1に移動する2段階機構で解釈され,尿素の添加により1分子過程が影響を受けた.測定した実験条件下では尿素添加による立体構造の変化はほとんど認められなかったが,GA-リガンド複合体の解離定数(Kd)は増加することが蛍光滴定と速度論実験:の結果においても認められた.尿素は疎水性結合を弱めることが知られているので,尿素添加により基質とサブサイト1との疎水性相互作用が弱められ,その結果プロダクテブ複合体形成が妨げられたと考えられた.