酒米に使用されている山田錦,五百万石,美山錦,北錦,若水の澱粉について,アミロペクチンの構造特性を理解するため,コシヒカリと比較した.澱粉溶液に直接イソアミラーゼを作用させて約15%部分加水分解物を調製し,ToyopearlHW-50Sによるゲルクロマトグラフィーで3区分(fr.1,fr.2,fr.3)に分けた.fr.3に分画されたアミロペクチンの外層から主に切り出された短鎖アミロースをHPAEC-PADで分析した.酒米とコシヒカリの鎖長分布を比較したところ,酒米のアミロペクチンはDP13-23付近の長めの鎖長が多く,DP6-12付近の短めの鎖長が少なく,老化しやすい構造特性であると推測した.次にRVAを使用し酒米の物性特性を調べた結果,酒米は高い糊化開始温度,高いセットバック値,低いブレークダウン値を示し,アミロペクチンの外層部には長めの短鎖アミロースが多く存在すると推察された.これらの結果から,老化しやすいアミロペクチン構造を有した米澱粉が酒米に適していると考えられた.