異なる物性を示す3種類のもち米(はくちょうもち,ひよくもち,こがねもち)の澱粉について,物性とアミロペクチン構造の関係を理解するために研究した.はくちょうもちの生地は柔らかく,こがねもちの生地は硬く,ひよくもちの生地は中間的な物性を示す.この3種類のもち米のなかでは,ソフトタイプであるはくちょうもちのRVA測定結果は,最も低いセットバック値と最も高いブレークダウン値を示し,ハードタイプであるこがねもちは,はくちょうもちとは逆の傾向を示した.また,中間的な物性を示すひよくもちのRVA測定結果は中間的な値であった.これらの物性をアミロペクチンの構造面から理解するために,枝切り酵素を澱粉に作用させ部分加水分解物を調製し,アミロペクチンの外層に主に存在している短鎖アミロースの分布をHPAEC-PADで分析した.その結果,はくちょうもちは短めの鎖が多く長めの鎖が少ない構造であることから,老化に対して抵抗性がある構造であること,こがねもちはその逆で老化しやすい構造であること,ひよくもちは中間的な構造であることが明らかとなった.これらの結果から,アミロペクチン分子の外層に存在する鎖長分布の性質は,澱粉の老化に関する物性に影響することが示唆された.