サイクロデキストランおよびイソマルトオリゴ糖生産原料に適した1,6-直鎖結合を主成分とするグルカン(デキストラン)を生産する菌株を得る目的で,製糖工場製造ラインよりスクリーニングを行った.その結果,菌体外にグルカンを生産する菌株を9株(S-21,S-24,S-32,S-44,S-51,S-53,S-61,S-64およびS-65株)分離した.スクロース存在下で培養すると,すべて培養液のpHが低下し,グルカンスクラーゼ活性が見出された(Fig.1).また,すべての菌株は,スクロースによりグルカンスクラーゼが誘導生産されるというロイコノストック属菌の特徴を示した.分離した菌株のうちS-32株以外の8株は水溶性グルカンを生産し,S-32株は難水溶性のグルカンを生産した.それぞれのグルカンを13C NMR分析した結果,S-24,S-51,S-53,S-61およびS-65の5株が生産するグルカンは1,6-直鎖結合を主成分とし,他の4株が生産するグルカンは1,6-結合の他に,1,3-分岐結合を含むことが示された(Fig.2).また,メチル化分析によりS-64株が生産するグルカンは,1,6-結合,1,3-結合の他に,1,2-結合,1,4一結合を含むことが示された.S-24,S-51,S-53,S-61およびS-65株のグルカンは良好にサイクロデキストランおよびイソマルトオリゴ糖に転換されたが,他の4株のグルカンは転換効率が悪かった.1,6一直鎖結合より成るグルカン生産株のうち最も高いグルカンスクラーゼ活性を有するS-51株を選抜した.S-51株は,Leuconostoc sp.と同定された.S-51株の培養液中のグルカンスクラーゼは唯一種類見出され,これを精製して諸性質を調べた結果,分子量約165kDa,最適pHは5.5,至適温度が35℃ であった.また,代表的なデキストラン生産株Leuconostoc mesenteroides NRRLB.512F株の酵素と比較したところ,S-51株の酵素は,スクロースへの親和性がやや高く,温度,pH安定性もわずかに高かった(Table1).