味覚が類似し,テクスチャーの異なるゲルを用いて,国の「えん下困難者用食品」の基準中の方法に基づいた2-バイトTPA(Texture Profile Analysis)試験を行った.得られたTPA曲線から,3つのパラメータ「硬さ」(hardness),「付着性」(adhesiveness),「凝集性」(cohesiveness)を求めた.また,同一のゲルを用いて,超音波パルスドプラー法により,咽頭部通過時の食物の流速を測定した.3つのパラメータの中では「硬さ」が,誤嚥リスクを予測しうると報告がある咽頭部最大流速 V maxとの相関が最も高かった.試料濃度の増加に伴って,「硬さ」と咀嚼物粘度は共に増加したので,このことが「硬さ」と V maxが相関する理由と考えられた.「硬さ」の値が数千N/m2以上では, V maxの値が誤嚥しにくいとされるヨーグルト程度となり,誤嚥の危険性がかなり低減することが示された.一方,「凝集性」は,咽頭部流速分布との相関がみられなかった.