豆腐や大豆蛋白質を製造する際に副生するおからは, 現在食品廃棄物としてその処分方法が社会問題になっている.おからを加水分解して得られる水溶性多糖 (Soybean Soluble-Polysaccharides; SSPS) の主成分の構造は, ガラクツロン酸主鎖にガラクタンとアラビナンが結合した構造が推定されており, これは乳化特性に優れ, 乳化剤として有名なアラビアガムの代替品として有望視されている.このSSPSを食品・工業用乳化剤として利用するためには, SSPSの乳化剤としての特性, とくに乳化能を決める蛋白質の特質と酸性領域での分解特性を知る必要がある.よって本研究では, SSPSとアラビアガムの乳化特性, 乳化特性における蛋白質の役割, 酸性領域での加水分解特性について比較検討を行った. SSPS, d -limoneneに吸着した画分のSSPS (P) , およびSSPS (P) をプロナーゼEで処理したSSPS (E) の乳化安定性 (最大濁度の半減期) を測定 (soybean oil, 1%, 25℃, pH7.4) したところ, SSPSの乳化安定性は20分, SSPS (P) は51分, SSPS (E) は7分であった.これらのSSPS中の蛋白含有率を測定したところ, SSPS10%, SSPS (P) 44%, SSPS (E) 9.8%であった.これらの結果から, SSPS中の蛋白質の特質が乳化特性において重要であることが分かった. Fig.2にsspsとアラビアガムの乳化活性 (撹拌20分後の500nmでの濁度) のpH依存性を示す.SSPSの場合, d -limonene, soybean oilともにSSPS中の蛋白質の等電点に近いpH3~4で最大値を示した.これに対して, アラビアガムはpH3以上では高い乳化活性を示した.Ethyl n -butyrateを使用した場合は, アラビアガムの乳化活性がほとんど0であるのに対して, SSPSの乳化活性はpH2~5で約1.8と高い値を示した.使用するオイルによって乳化特性は非常に異なり, d-リモネン, 大豆油に対するSSPSは, 等電点付近のpH3~4で最大値を示した.また, 酪酸エチル, ヘキサノール, カブロン酸メチルに対するSSPSの乳化特性は非常に優れていた. SSPS, アラビアガムの酸性領域 (pH1~3) における加水分解速度は, 両乳化剤ともにほぼ同じであり, このpH域での加水分解活性化エネルギーは94kJ/molであった.