食品製造・加工プロセスの合理的な設計法確立を目指して, 大別して, 3つの方向の研究を行った.第一の方向の研究は, プロセスの上流の設計に関するもので, 食品関連物質の酵素合成を有機溶媒中で行うものである.対象物質として, 甘味料アスパルテームの前駆体, 必須アミノ酸よりなるオリゴペプチド, 可食性界面活性剤を取り上げた.第二の方向の研究は, プロセスの下流操作のうち, 分離操作である液体クロマトグラフ, 濃縮操作である凍結乾燥の設計法に関するものである.第三の方向の研究は, 目的達成型研究である.目的は, それ自身高い機能をもった脂質を, 可食性高分子を包括剤として粉末化し, 機能をさらに高めることとした.多価不飽和脂肪酸よりなる脂質の酸化を抑制するという, 脂質が主役をなす研究と, 中鎖脂肪酸よりなる脂質を油相とするW/O/W型エマルションを調製し, 内水相に閉じ込めた親水性機能性物質の腸管吸収を高めるという, 脂質が脇役となる研究を行い, 成果を得た.さらに, 上記の研究を含めた長い研究過程において頻繁に経験した, 共通的物理化学的現象について紹介した.それらは, 周囲の分子や官能基との多様な相互作用を伴う際の, 化学反応の物理化学的モデルとエンタルピー・エントロピー補償効果である.