交流高電界技術とは電気抵抗をもつ食品に流れる電流により材料自身が発熱するジュール熱と高電界の印加により微生物の細胞膜に物理的な損傷を与える電界効果の相乗効果により, 微生物を瞬間的に死滅させる技術である. 本研究では, 連続式の加圧型交流高電界装置を試作し, 交流高電界技術を中温性耐熱性菌, 高温性耐熱性菌および好酸性耐熱性菌の胞子に適用し, それらの殺菌特性の検討を行った. 交流高電界処理による B.subtilis 胞子の殺菌において, 処理条件が殺菌特性に与える影響について明らかにした.具体的には, B.subtilis 胞子を含んだ食塩水を113℃以上の温度 (殺菌開始温度) で処理した場合, 加熱温度の上昇に比例して殺菌効果が高くなることがわかった.そのときの菌数が1/10に減少する上昇温度をD値とした.印加電界強度を3倍にするとD値は小さくなり, 115℃の処理温度で1対数の殺菌効果の増加が得られたが, 電流を3倍にしても殺菌効果の向上は認められなかった. 交流高電界殺菌とUHT殺菌のD値を比較したところ, 交流高電界殺菌のD値がUHT殺菌のものより小さい値となり, 交流高電界の殺菌効果が高いことを示した. B.subtilis の他, 4種類の耐熱性胞子に印加した電界強度を2倍にしたとき, 全ての菌種で D 値が小さくなり, 殺菌効果が向上することがわかった.電界による殺菌効果の向上割合は, D 値が大きい菌種の胞子ほど大きいことがわかった.また, 交流高電界における各耐熱性胞子の殺菌開始温度は胞子の耐熱性の指標である F 値の対数に比例することがわかった.