微生物的変質がなく, 食味がよい, より高品質な準無菌包装米飯 (cooked rice packed under semi-aseptic condition) の製造を目的に多くの技術開発が進められてきた.今回, レトルト食品の商業的無菌性の考え方に基づき, 準無菌包装米飯において, 微生物に関わる保蔵安定性をより向上させることを目的に, 準無菌米飯の商業的無菌性に及ぼす米由来の耐熱性生菌の影響を調べ, 製造方法の改良を検討した. 本研究で玄米より B.subtilis 菌株が分離された.その耐熱性は D 100℃=41.4分で, これより従来の炊飯加熱による殺菌加熱時間は F =0.43 D 100℃と推算された. Di は任意の温度 i (℃) のとき耐熱性生菌が90%死滅する加熱時間を表す. また商業的無菌性を達成するための必要殺菌加熱時間 F (分) は F =2 Di であることが推算され, 従来の製造工程の炊飯加熱において, 上記の商業的無菌性を達成するための必要殺菌加熱時間を満たしていなかった. そこで, 商業的無菌性を達成するための炊飯加熱操作を検討した.その結果, 105℃で18~28分間, 110℃で13~14分間の炊飯では米飯の食味において問題が生じないことがわかった. また, 玄米より分離した B.subtilis 菌株の耐熱性は D 121.1℃=0.32分で, これより商業的無菌性を達成するための必要殺菌加熱時間は F 0=2 D 121.1℃=0.64分相当以上と推算され, F 0=0.7分を達成するには, 105℃で38分間以上, 110℃で14分間以上の加熱炊飯が必要であることがわかった. 本研究の結果より, 準無菌包装米飯において従来と同等の食味で, より保蔵安定性を有した高品質の製造工程として, 110℃で14分間 ( F 0=0.7) の炊飯加熱操作を提案する.